イスタンブールふたたび*その5

イスタンブールで暮らした数年間。
時に、週末のお出かけに。 時に、日本からのお客様とご一緒に。 時に、日常の気分転換に。
何度ここを訪れたことでしょう。
その度撮っていた写真も、気がつけばなんて膨大な量。
我が家のアルバム、イスタンブールの歴史的建造物の中でも、ずば抜けて枚数が多いものです。
(同じような写真ばかり、と言うハナシもありますが・・・苦笑)

だけれども・・・

このブログでは、とうとう話をすることが出来ないまま、
イスタンブールを去る日を迎えてしまった場所でした。

恐らく、私にとっては、
あまりにも好きすぎて、
触れることが出来ない場所だったのかもしれません。



☆ アヤソフィア ☆



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今回の訪土でも、ここを見学するために、出来る限り時間を割いて。
(そして、見学中には、こんなこと もあったりして・・・。笑)


アヤソフィアについて、今さら、私ごときが語れることはありませんが・・・
今回、この場所で過ごした時間の中でも、今の自分がとどめておきたい。
そう思った光景を何枚か
ここに残しておきたいと思います。


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537年、東ローマ帝国の皇帝ユスティニアヌスの命において完成された大聖堂。
それが現在のアヤソフィアの始まりです。

漆黒の闇を照らす明星のごとく。当時のギリシア正教の要所として、1000年。
異教徒の侵攻に身を任せ、イスラム教のモスクとしてもなお、輝きを放った500年。
そして、帝国の衰退と共に、あらゆる束縛から開放されて・・・。博物館とその名を変え、ついには「世界遺産」として訪れる人々に感動を与え続けている、今・・・。

なんとも波乱に満ちた、稀有な歴史に彩られた建物でしょう。
広い世界を見渡せば、ここよりももっと壮大な、壮麗な建物は枚挙にいとまが無いでしょう。
だけれども、この世に姿を現してより1500年もの、眩暈がするような長い年月を、
時にキリスト教徒の、イスラム教徒の、安息の場となり、様々な思いをめぐらせて・・・
いつの時代も絶えること無い、人々の息吹とともに歴史を刻み続けている建物は・・・
ここを置いて他にあるでしょうか?
それこそが、アヤソフィアをアヤソフィアとして、世に比類無き存在にさせているのではないかと思うのです。




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初夏の眩い光溢れるイスタンブール。ところが。
堂内に一歩足を踏み入れた瞬間から、身体を包み込む、なんとも荘厳な空気・・・。
そして。


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がらんと巨大な空間と、
遥か頭上を覆う、あまりにも巨大なドーム。

高さ55m、直径32m。
キリストの技術者たちが成し遂げた、奇跡とも言える偉業。それは、建物の外観から想像する大きさよりも、実際に聞く数字よりも、ずっと大きく感じられ。
思わず立ち尽くし、ただ、ただ、息を呑むばかり・・・。
人の仕業とは思えないような、まさに「神の天蓋」です。



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そして、これほどまでに巨大なドームを擁しているからこそ、
支える壁にとられた開口部は、思いの他少なく、小さくて・・・。
差し込む光が、よりいっそう神々しく、美しく・・・。





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美しい細工が施されたミフラーブと、それを見下ろす、聖母マリア。
唯一神アッラーや、預言者ムハンマドの名が掲げられた柱。
秘密のようなコリドーをひっそり飾る、イズニックタイルのブルー・・・。
すべてが飴色の輝きに包まれて。
今の世の私たちに、己が歩んだ道のりを、雄弁に物語ってくれるのです。



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そんな堂内を見守る、美しい翼を広げた熾天使たち。

聖なるかな  聖なるかな

鳴り止まぬざわめきに、今もともに歌い続けるのは
遠い日の調べ、神への讃歌なのでしょう。








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洞窟のような通路をのぼり、2階の回廊へ。



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ここで最も注目を集めるのは、モザイク画の数々。



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煌く欠片で描かれた、イエス、マリアと、歴代の皇帝たち。




美しい・・・。



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そして、ビザンティンのモザイク美術において、最高傑作との誉れ高い
「ディシス」。



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慈愛に満ち、見る者の心を安らぎへと導く、イエスの表情。
様々な石や色ガラスのグラデーションで描かれたその姿は、生き生きと薔薇色に輝き、温もりすら感じられるようです。


それに比べ、なんとも言えない翳りを帯び、悲哀に満ちたような・・・、
マリアとヨハネの姿。


2人は一体、イエスに、何を請願しているのでしょう。
人類の救済?
それとも、・・・



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想像してみて下さい。




かつてここに、キリストの人々の、イスラムの人々の、祈りが木霊した日のことを。

そして、コンスタンティノープル最後の日、
この広い堂内に詰め掛けた人々の姿を。
彼らが祈り、求めた言葉の数々を。



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崇高なる神のために、神がおわす場所としてつくられた、大いなる聖堂。


ここに降りた神は、人々の祈りに、なんと応えたのでしょう。
そして人々は、その姿を、言葉を、どんな風に感じたのでしょう。
・・・


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宗教や民族の枠を越え、人々が求めて止まない、安らぎという名の情念。

それは、求めても決して得られないものだったのでしょうか。
あるいは、求めてはならないものだったのでしょうか。



形にならない果て無い思いが、この世に具現化されたもの。
それが、今目の前に佇む、アヤソフィアという姿なのではないか。



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私には、そんな風に思えてならないのです。
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by nazli | 2009-07-27 22:42 | '09イスタンブールふたたび
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