思い出の一枚
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帰国したら、これだけは是非観に行きたい!
そう思っていた展覧会、
プラド美術館展 へ行ってきました。





世界に名だたる絵画の殿堂、プラド。
それはまさに、スペイン黄金時代の煌めきと、いつしか闇に覆われた亡国の憂い・・・。
そして私にとっては、はるか遠い異国の精神世界を覗かせ、様々な思いをこみ上げさせるものでもあるのです。


* * * * * * * * *


今回の展覧会は、以前マドリッドを訪れた友人と一緒に。
全く違う環境の中で、あの時の感覚を思い出しながら。ゆっくり鑑賞して来ました。
感想は色々ありますが・・・。
今回の目玉のひとつ、ムリーリョによる「貝殻の子供たち」(写真)を観たときのことです。


この作品を初めて観たのは、今から20年近く前のこと。
当時は、「イエスとヨハネ」というキリスト教上の最重要人物を、「幼児」というごく身近な、世俗的なものに変えて描いている事にまず驚き。
しかも、その幼児たちの、ふわふわと柔らかそうな金の巻き毛、体温が感じられそうなほどにむっちりした肌の質感!
そんな安らぎに満ちたものから醸し出される、なんともいえない荘厳な雰囲気・・・。
つまりは画家の技量に、すっかり圧倒されたのでした。

そして今回。
暫しの時を経て、改めてこの作品に触れてみると・・・。
しなやかに描かれた子供たちの、ひとつひとつの仕草。
柔軟に手を伸ばす様子であったり、差し出された貝の杯におそるおそる口をつける様子であったり、
何かの折りにつけ、ごく身近でも目することが出来る幼子達の姿。ぎこちなさの中にある、生き生きとした躍動感。
限りない愛おしさに、たまらなく感動させられたのでした。

ご存知の通り、ムリーリョの作品に描かれる小さな者、天使や聖人に姿を変えた乙女、子供たちは、非常に愛くるしく、慈愛に満ちたものばかりです。
これはひとえに、ムリーリョという画家が、幼い命を愛して止まなかったからに他ならないでしょう。
そんな画家の悲しいほどの思いが、数百年の年月や、かつてあったであろう制約・束縛を超えて、しみじみと胸を震わせたのでした。


時の流れとともに、様々なものが変化していく。
自分自身の感じ方や考え方は勿論、周囲の環境や、あるいは世界の価値観であったり、・・・。
ムリーリョの絵に向かい、心深くに触れたこと。
それは、私の中で過ぎ去った、20年の歳月が培ったものだったのか?
それとも・・・。

たとえ千年の時を経たとしても、変わらない何かがある。
そんな当たり前のことさえも、流されやすい今の時代。だからこそ。

本当に大切な何かを、見失わないようにしなくちゃね・・・。

そんな事を思いながら、美術館を後にした午後でした。
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by nazli | 2006-06-30 20:11 | 日本の日常
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