オリエント・エクスプレスがやって来た!

f0103360_248554.jpg19世紀末。
西洋と東洋を結ぶ役割を担い、運行を開始した豪華国際夜行列車、オリエント・エクスプレス。
ヨーロッパ人の東洋への憧れを乗せたこの列車は、パリからイスタンブールへ向けて出発したのでした。


終着駅は、東洋の香り漂う欧州の果て、ここイスタンブールのシルケジ駅です。
西洋世界から遥か遠く、この駅舎に到着した時、
初めて触れる東洋世界の空気に、旅人たちは どれほど好奇心を刺激され、時に戸惑い、感激したことでしょう。
各国の王侯貴族や有名俳優、小説家、大物スパイまでもが名を連ねる。
なんと華やかな乗客名簿。
それを眺めているだけで、過ぎ去った夢の世界へと誘われるようです。 


それから1世紀弱にわたる運行期間を終えた今。
現在は、ロンドン~ベネチア間を中心に走り、当時の面影を偲ばせてくれるこの列車が。
一年に一度、たった一度だけ。
往年の夢を乗せて、かつての終着駅、イスタンブールへとやって来るのでした。





* * * * * * * * *


所用のついでに、シルケジ駅へ立ち寄ったこの日。

「昔はここまで、オリエント・エクスプレスが来ていたんだよね。」
「今でも、年に一度は来ているらしいね?」

なんて。
何の気なしにお喋りする私たちの目に飛び込んで来たのは、今までに見た事のない、重厚な列車・・・。

・・・まさか?・・・これはまさか??
・・・

高鳴る胸を押さえつつ、車体の文字に目を走らせると。
そこに書かれていたのは、「ORIENT-EXPRESS」の文字!
そう、この日こそ、年に一度 オリエント・エクスプレスがやって来るという日だったのでした。

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オリエント・エクスプレスがイスタンブールへやって来るのは、毎年9月初旬の金曜日。
2日間の滞在後、再びパリへ向けて出発するそうです。

こちらの路線は、イスタンブール~ブカレスト~シナイア~ブタペスト~ベネチア。
駅員さんは、「これはパリまで行くんだよ。」なんて言っていたけれど。
ベネチアからまた、パリ行きの列車へ乗り継ぐということかしら??

※追記
オリエント・エクスプレスのサイトをチェックしたところ。
この列車は、パリからやって来てイスタンブール到着後、ベネチアまで折り返し運転しているようですね。




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それにしても、優美な姿。


乗客と思しき、お洒落に身を包んだ人々がさざめく様は、まるで映画の一こまを見るようです。


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私たちも、そんな気分にあやかって。
折角だから、列車を眺めながら少しお茶でもしましょうか、と。
駅構内のカフェ、オリエント・エクスプレス・カフェで一休み。


こちらもまた、列車に負けず劣らず エキゾチックな雰囲気です。


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シュガーも勿論、オリエント・エクスプレス仕様。(^^)
ステンドグラス模様のパッケージなんて。
あぁ、旅心は高まるばかり・・・。

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ふと気が付くと、いつの間にかホームに赤絨緞が敷かれているではありませんか。
乗客の皆さんは、ここを歩いて列車に乗り込むということかな。
なんてドラマチックな演出でしょう!


そうして、出発時刻も近づいた頃・・・。
何やら入口が騒がしいと思ったら!
メフテル軍楽隊がやって来ているではありませんか!


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メフテルとは、古代より西アジア・中央アジアに伝わる音楽の流れを汲み、オスマントルコ帝国において独自の発展を遂げた音楽様式のこと。
帝国ではこれを、戦時下においては自軍の士気高揚・敵軍への威嚇のために用い、また、宮廷内においては儀礼時に用いていたのでした。

その旋律は力強く、煽動的であり、神秘的であり、・・・。

オスマントルコの衣装に身を包んだ軍楽隊が奏でる、ジェッディン・デデンの曲の数々。
これぞまさに、古きよきトルコの幻影。東洋世界への憧憬ではないでしょうか。


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ホームは、年に一度のお楽しみ、列車見物に来た町の人達で一杯です。
メフテルの調べに胸躍らせながら、今日の旅立ちをお見送り。
皆さん、iyi yolculuklar! (良い旅を!)




イスタンブールでは現在、ヨーロッパ大陸とアジア大陸を結ぶ 「ボスポラス海峡横断鉄道トンネル」 が、5年後の開通を目指して建設されているところです。
このトンネルが開通し、二つの大陸が文字通り結ばれた暁には。
オリエント・エクスプレスに乗って、ロンドンからパリ、イスタンブールを経て、ダマスカス、バグダット、そして遥かシンガポールまで。
かつて海越え辿り着いた道を、今度はユーラシア大陸を横断して行く。

サヴォイで朝食をとったら、さあ出発。
日ごとに表情を変える車窓を眺めながら、旅の終わりは ラッフルズのバーで乾杯を・・・。

そんな気の遠くなるような夢が実現する日が来るかもしれませんね。


利便性や快適性とは逆行するような、優雅でノスタルジックな列車の旅。

今日もまた、見果てぬ夢に彷徨いながら。

遠ざかる列車の後姿を見送った私でした。



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by nazli | 2006-09-11 03:27 | その他海外の旅
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